悪い事は続くもので、昼休みから戻る途中、至急融資窓口へ戻るよう呼び出された。
 窓口には山下が来ており、課長の原田が深刻な顔をしている。

 僕が窓口にもどると、

「一体どういう事ですか? 手形の一覧に来月の物が混じっているじゃないですか!」
 山下の口調は激しく激怒していた。


「えっ。申し訳ありません。直ぐに確認を……」
 僕は慌てて頭を下げた。


「もういいよ! こんな融資担当見たことない!」
 山下の怒りは収まらない。

「申し訳ありません」
 原田も頭を下げる。

「申し訳ありません」

 僕も深々頭を下げたその時だった。
 
 店の中に「いらっしゃいませ」が響き渡り、辺りの明るさを感じた。彼女が来たのだと僕はすぐに分かった。


 きっと彼女は僕が山下に頭を下げている姿を見ただろう…… 僕は情けなく、そして悔しかった。


 山下は一頻り文句を言うと、待合ソファーに座っている彼女の元へ向かった。

 彼女の横に腰を下ろし何か話をしている。僕には山下が僕の失態を話しているように思え、恥ずかしさでいっぱいになった。山下は立ち上がり、彼女の耳元で何か囁くと、そのまま出口へと向かった。

 その姿を彼女はそっと目で追っていた。


 今度は息が出来ない程苦しくなった。

 その後、僕はしっかり課長に絞られた。時々ある僕のミスに課長もかなり怒っていた