「もう一つちなみに、だ」
まだあるんですか…先生……。
「一ノ瀬は体育祭実行委員だ」
「え!!!」
引っかかったな、という先生の笑顔と、
クラスメイト(女子)の安堵の表情…
つまりは…
はめられた…!!!
「まあ多分女子はすぐ決まるだろうから、
男子はちゃんと考えておけよ〜」
そう言って先生が教室から出て行ったところで
改めて、完全にはめられたことを理解した。
……確信犯だ、絶対に。
で、でも………
先輩と実行委員やりたい…!!
私が先輩のことが好きなのも、
好き好き言ってるのも、
この学校の人はほとんど知ってるみたい。
それこそ、先生も含めて!
女の子たちがそんな私を見てもなんとも
思ってないのはきっと、
先輩が私に全く女として興味を示さない事と
もはや芸能人とファンの関係にしかみえないかららしい…由良ちゃんが言ってた。
由良ちゃん的には、その方が良いって。
女の子の逆恨みは怖いんだから、
今のままで行きなさいって言われたから、
私はこのスタイルで好きを伝えてる。
もう一つは私が先輩のことを、
先輩、もしくは一ノ瀬先輩って呼んでるから。
一ノ瀬先輩と同級生の女の先輩たちは、
当たり前のように下の名前で呼ぶわけで…
それがその女の先輩たちにとって、
自分たちが優位な証らしい。
由良ちゃんが言ってた。
とにかく、今の一年生の中で
こんなに公にして好きを伝える人なんて
私しかいないから…
きっと他の女の子だって密かに恋してるんだと思うんだけど…。
でも、うん!
私だって負けたくないもん!
だから、やっぱり……
「体育祭実行委員やろ!」
小声で呟いた言葉に、ガッツポーズを決めて
1時間目の授業の支度を始めた。
その日の放課後、今私は…
ドキドキしながら実行委員会議が始まるのを待ってます!
LHRで先生に
「一応聞いておくが女子で実行委員やりたいやつ挙手しろ〜」
と、私の目を見て言われたので、
それはもうピーーーンと手を伸ばしました!!
他に人がいなかったから私にすんなり決定。
男子はクラスのバスケ部の男の子になった。
彼は…確か、佐久間くんは嫌々実行委員になったんだ。
「…めんどくさ」
ボソッと隣で呟かないでよ!
「実は楽しいかも…?」
「なわけねーだろ、絶対めんどくせえって…。
つーか、よく立候補したな。
一ノ瀬先輩の影響なんだろうけど…
お前もよく頑張るよな」
「それは8割!」
十分高ぇよという佐久間くんの言葉をスルーして、話を続ける。
「残りの2割は、元々こう言うのが好きなの!」
「実行委員とか?」
「そう!見えないところで支えてる…
ってなんかカッコいいと思わない?」
「虚しくねえ?」
「全く!だって、見てくれてる人は
しっかりとみてくれてるし、何よりも…
みんなが楽しそうなの見ると、
頑張ってよかったなあってなるから!」
「うん、菜奈ちゃんらしいね。
菜奈ちゃんみたいな子が実行委員やってくれると、俺も嬉しいよ」
…ん、あれ?
佐久間くん、喋ってないよね…?
この声は…もしかして、
ゆっくり後ろを振り返ると、
案の定、王子様スマイルの一ノ瀬先輩!!
「わ、わ、わ…いつの間に…!!
先輩、こんにちは!!」
「こんにちは。
毎年俺が実行委員やってるからさ、
今年は委員長だし、頼ってね」
ニコッと微笑みを残して、先輩はみんなの前へ
ふふふ…やっぱり素敵です…!!
頼ってね、って言葉、カッコよかったなあ〜
なんて1人ぽわぽわしてたら、
佐久間くんに頭を軽く叩かれて
ハッとして我に返った。
「なかなか面白いな、お前…
えっと…真白 菜奈だっけ」
「うん!菜奈でいいよ!」
「俺、佐久間 龍弥、龍弥でいいから」
龍弥だって……名前カッコいい…。
そんなことを思ってると、
一ノ瀬先輩の声で実行委員会議が始まった。
「…と、いうことでこれから役割分担をするから、一つずつ……」
先輩かっこいいなあ……。
「今年は2年生が……だから、1年生が…」
プリントを持つ手、すごく男らしくて
でもすらっとして綺麗で…
「で、次に重要なのがクラスの人たちから…」
声…いい声だな。
耳にすんなり入ってくる心地いい低音…。
「菜奈、お前先輩の話聞いてる?」
「えっ!?」
「聞いてねえな…」
「…菜奈ちゃん、補佐役ね、よろしく」
「え、え?補佐役?え??」
龍弥くんが何かを言ったと思ったら、
今度は先輩が補佐役って……
「ということで、2番目に忙しい補佐役を
これからを担う1年生の中の菜奈ちゃんに任せたから、2年生は全体を見て欲しい」
……あれ、これは、もしかして…
「私…やらかした?」
「あの先輩の笑顔は怒ってるな」
「やばい…」
「まあ、怒ってるって言うか、
呆れてるって言うか、お前が熱視線を送りすぎで向こうもやりづらそうだったし」
………やらかしてしまったみたいです。
先輩、ごめんなさいー!!!!!
「………」
「………あ、えと…ごめんなさい…」
実行委員会議が無事?終わり、
みんなが帰って行く中…
私、真白 菜奈はニコニコの先輩を前に、
ビクビクしております…
「もう…菜奈ちゃんのおかげでやりづらかったよ」
「あはは…つい…」
任命されてからは気持ちが沈んで、
ずーっと机を見てたから
先輩的にはやりやすくなったんだろう。
もうほんっとに、ごめんなさい!!
「でも私、補佐役なんてできる気が…」
「そうかな?俺はむしろ適役だと思ってるよ」
「私が、ですか…?」
「そう、菜奈ちゃんがね!
だって菜奈ちゃんはかなりの努力家だし、
やると決めたことはとことんやるでしょ?
それに、何と言っても相手のことをよく考えてるし…だから、ね?」
そんなに褒められたら…
「頑張ります!!」
そう言っちゃうじゃないですか!!
とりあえず…そう言いながら先輩はポケットに手を突っ込んで、携帯を出した。
「連絡先、交換しようか」
「へっ」
「補佐役の人にはいろいろ事務連絡多いからね」
あ、そっか……。
補佐役って、委員長の補佐だもんね。
そりゃあそうだ!
なんて間抜けな声を出しちゃったんだろう…
同じくポケットから自分の携帯を取り出して、某アプリのQRカードを見せると、先輩はいつもの笑顔で登録した。
「何かあったら連絡するよ」
「はい!!」
事務連絡用なのは分かってるけど…
これは、素直に嬉しい…!!!
「菜奈ちゃん!これ、爽太のチェック必要だからお願い!」
「はい!」
「菜奈ちゃーん!これ、菜奈ちゃんのチェックも必要なの!爽太からのチェックもらったから!お願い!」
「は、はい!」
「菜奈ちゃん、これこっちだっけ?」
「あ、違います!あっちです!」
「菜奈ちゃんー!!どうしようー!」
「えぇ!?」
コンニチハ、真白 菜奈…デス。
体育祭の準備が始まって1週間。
最初の方は割と初歩的なことをやってたから
余裕があったんだけど…今は……
「菜奈ちゃん!これ、学年に集計とったら菜奈ちゃんに渡せば良い?」
「は、はい!おねがいします!」
「りょーかい!」
一ノ瀬先輩に負担が行かないように、
そう設けられた補佐役のお仕事はあまりにも大変で、目が回りそう…。