一緒の部屋で寝なきゃ大丈夫だろうし。
うん、頑張れ、俺。
そう思いながら、菜奈が起きるまで
料理をしたりして気を紛らわしておいた。
「んん……」
「菜奈?」
数時間くらいたって、時刻は夕方の17時過ぎ。
苦しそうな菜奈の声が聞こえてベッドの方を見ると、すごい汗。
額に浮かぶ汗を拭ってる時、触れた部分がすごく熱くてビックリした。
「爽太くん……あつい」
「熱、上がってそうだね……。
タオル濡らしてくるから待ってて?」
こんな状況になるなら、俺いた方が良かったかも。
冷たい水で濡らしたフェイスタオルを菜奈に渡して、冷えピタ貼り替えて。
そろそろ薬の効果が切れ始めたのかもだし、ご飯食べさせちゃおうと思って菜奈を座らせたところで、ドアが開く音がした。
「……あら?」
「あ……」
見た目、若そうな女の人が不思議そうに、でもどこか興奮した様子でこっちを見てた。
もしかして、そんなことを思ってたけど、
答えはすぐ返ってきた。
「お母さん……おかえり、早いね?」
……菜奈のお母さんだ。
「風邪だって連絡来たから一旦仕事抜けたのよ〜!
ほら、菜奈はいつも風邪のとき寂しすぎて泣いちゃうでしょ?」
そういえば泣きそうだった……
なんて、絶対に言えないけど。
菜奈は少し口を膨らませながら、俺の作った夜ご飯を食べてる。
「爽太くん、だったかしら?」
「はい。すみません、いきなりお邪魔して……」
「いいのよ!助かったわ!
普段家に帰ってあげられてないから、少し心残りだったけれど……。
最近どことなくいい顔で寝てるなって思ったら彼氏が出来てたなんて、もう!」
早く言ってくれれば良かったのに、と興奮気味の菜奈のお母さん、七海さん。
できるキャリアウーマンって感じがする。
「爽太くん、私また仕事に戻らなきゃなの……菜奈のことお願いしちゃっても平気かしら?」
「大丈夫ですよ」
「助かるわ!ありがとう!!
それじゃあ、菜奈。安静にしてるのよ〜?」
七海さんはそう言って、また仕事へ出かけてしまった。
毎晩菜奈の寝顔確認してるって、菜奈のことちゃんと大好きなんだなって分かっただけでも安心した。
なんだか勢いが菜奈にそっくりだったし。
「……爽太くん」
「うん?」
「今日、いてくれて本当にありがとうございます!
助かったのももちろんだし、一緒にいれるのも嬉しいし、寂しい気持ちが全くないの、爽太くんのおかげです!」
……そういうこと、無自覚で言うんだもんな。
そっと菜奈に近づいておでこにキスをした。
「口は風邪が治った時だね」
「……!」
真っ赤になる菜奈を見ながら、
俺自身も照れ隠しをした。
風邪も完治して、部活にも復帰。
二学期からも部活をどうしようか考えながら過ごしていたら、バスケ部の人達から残ってくれという言葉の嵐。
そんな夏休み終わり間近。
ゼッケンを洗うために水道に向かった。
自然とサッカー部が見えてくるんだけど、
最近すごく気になることがあるんです。
「……ち、近い、よね?」
サッカー部はちょうど休憩に入ってたらしくて、マネージャーさんがタオルを一人ひとりに渡して行ってる。
その中の、1番年上そうな先輩。
……明らかに爽太くんと近い、気がする。
いや、気がするっていうか誰よりも近すぎる。
こんな感情、持ったって仕方ないし、爽太くんの誰にでも優しいところがいい所だし……。
なんて黒いもやもやが頭の中をぐるぐる。
自然と手が止まってしまってた。
ダメだ、部活に集中!
もう1度手を動かしてゼッケンを洗う。
でもチラリとサッカー部の方を見ちゃって……集中出来ない。
はあ、とため息をついたとき……
「菜奈ちゃん」
「へっ!?」
爽太くんの声がして振り返れば、やっぱり爽太くんが立ってた。
学校では基本ちゃん付けで呼ぶから、私も先輩呼びに戻してるけど、それよりもなんで!?
「菜奈ちゃんが見えたから」
私の考えてることが分かったのか、笑顔でそう返してくれた爽太くん。
嬉しいのに、どうしてもさっきの光景が頭から離れなくって。
我ながら、心が狭いと思う。
こんなに独占欲が強いなんて、知らなかった。
「どうしたの?元気ないね?」
心配そうなに訪ねてきた爽太くんは、何だかちょっと困り顔。
いけない、隠さなきゃ。
「な、何でもないですよ!元気です!ほら!」
元気だよアピールとして拳を作るも、爽太くんは依然として困り顔。
「……なんかあった?」
「なにかって……なんにも……」
「そうは見えないけどなあ。
……空元気っていうか」
そんなこと、そう言おうとしたのに。
「元気ですってば!!」
「え……」
「あっ……」
爽太くんに向かって、叫んでしまった。
爽太くんは驚きと悲しみが混じった表情をしてて、もうどうしたらいいのか分からなくなった。
そのとき、丁度、陣先輩が通りかかった。
「あれ?なにしてんの?」
「あ、陣先輩……」
「……やあ、陣」
「…………」
相当空気が悪いと思う。
陣先輩も私と爽太くんを交互に見たあと、私に別の仕事を言った。
正直、この場に居られる気がしなくてすごく助かった。
分かりましたと返事をしてその場を一旦去ったとき、ちらっとみた爽太くんの顔はすごく真剣で、少し悲しそうだった。
部活も終わって片付けをしてた時、菜奈、と陣先輩に呼ばれた。
「爽太となんかあった?」
「えっと……」
「あのあと、爽太もすぐに部活戻って何も聞けなかったから」
陣先輩に言っても大丈夫かな……。
いや、意見を貰えるかもしれない。
「……爽太くんとマネージャーさん、最近すごく距離近くなってて……」
「ああ……」
「爽太くん、落ち込んでる私に気付いて心配してくれたんです。
でも、ヤキモチなんて恥ずかしくて言えなくって、つい当たっちゃって……」
「んで、あの空気ね」
「す、すみません……」
陣先輩、笑うことなく聞いてくれた……。
笑われるかもって、思ってたのに。
「確かに、最近爽太と早紀の距離近いな」
「早紀さん、って言うんですか?」
「元バスケ部のマネージャーだよ。俺らと同い年、3年」
そうだったんだ……。
「……爽太もさ、すげえ優しいだろ?
いい所なんだけど、逆に悪くもなるんだよ。
だからさ、菜奈が言わなきゃ伝わらない時もあるんだよ」
「……私、前から自分に自信なくて、
早紀さん、すごく綺麗で……その……」
「心配すんな、大丈夫だから。
それに、可愛い彼女の嫉妬なんて可愛くて仕方ないだろ。
見てる限り爽太、菜奈溺愛してるしな」
クスクス笑いながらいう陣先輩。
少し、心が軽くなったかも。
結局そのあと、陣先輩に励まされ続けて、爽太くんにはちゃんと謝るって約束をして別れた。
……だから、今から私、爽太くんに電話します……!
「き、緊張する……」
まずなんて言おう。
今日のこと謝って、そしたらちゃんとヤキモチだって言って……それで……
もう、電話かけちゃえ!
そう思っても一向に通話ボタンを押せずにさらに15分。
突然、携帯が鳴った。
「え、え、え!? 爽太くん!?」
相手はどうやら爽太くんで、速攻電話に出ると、ちょっと声の低い爽太くんが出た。
『もしもし』
「も、もしもし……」
『あの、さ……今日ごめんね』
「え?」
突然の謝罪に内心パニックになりつつ、爽太くんの次の言葉を待った。
『無理に聞き出そうとしちゃって……。
菜奈にだってタイミングとかあっただろうし、俺頼りないから言いにくいところも……』
ちょ、ちょっと待って!
なんで爽太くんが謝る必要が……!
「ち、ちがいます!」
『え?』
「あの……その……っ、ヤキモチ、です」
『ヤキモチ?』
「水道でゼッケン洗うことが多くて、早めに終わった日とか、サッカー部が見えて……。
マネージャーさんと、距離、近いなって、勝手に妬いちゃって。
嫉妬なんて恥ずかしくて隠そうとしたら、つい……さっきみたいに……本当にごめんなさい」
『菜奈……』
少しの沈黙が流れた。
ど、どうしよう。
なんかいった方がいい、かな?