「翔子」

僕は教室に足を踏み入れる。

「あっ…優くん!」

さっきの汚い笑いかたから一転、彼女はいつもの翔子になる。

「教室の前を通りかかったら、翔子の笑い声が聞こえてきたのでここにいるのかなと思いまして」

「いま食堂に向かうところだったの。すぐに準備するね」

翔子は机の上の教科書や筆箱を片付け始める。

「私はお邪魔だろうし、行くね!じゃあね翔子!」

伊藤さんはそそくさに逃げるように教室を出ていく。
教室は僕と翔子の二人きりだ。

「今日はなに食べようか?今週の限定メニューは煮込みハンバーグらし…」

「翔子」

「うん?」

僕は彼女の声を遮るように名前を呼ぶ。

「翔子は僕のどこが好きなんですか?」

「もう、いきなりどうしたの?そうだなあ…やっぱり正直なところかな!」

「…そうですか」

彼女はお洒落で、いつも短めのスカートを履いている。
もともと綺麗な顔をしているのにメイクは少し濃いめで、そこは残念なところだ。

こんな子が僕を選ぶはずがない。
はじめに気づくべきだった。