次の日の昼休み。
僕は彼女とのランチの約束があったため、食堂へむかう途中だった。
ある教室の前を通りかかったとき、女性の声が耳にはいる。

「まさかここまでうまくいくとはねー!」

この声は、翔子といつも一緒にいる伊藤さんの声だ。
ゲラゲラと、はしたない笑い声。
僕はあまり好きになれないタイプだった。

「翔子にかかればどんな男もイチコロよね!あの変人の西條でさえね!」

僕の話をしているのか?
と、いうことは翔子も教室にいるのか。

こっそりと教室を覗くと翔子と伊藤さんが、窓側の席で談笑しているようだった。

「ほんっと、どいつもこいつもチョロくて面白くないわ」

しょう…こ?
翔子ってあんな話し方をする子だったか?

「もう西條とやったんでしょ?意外とはやかったよね」

「そうなの。もっとガード固くて落としがいがあると思っていたのに、意外とあっさりしちゃったわ。結局あいつもヤりたいその辺の男と一緒ってこと!」

二人はゲラゲラと笑いあっている。

「今から西條とご飯なんでしょ?行かなくていいの?」

「ちょっとくらい待たせとけばいいのよ。もうヤったし近々別れるわ」

「翔子最低じゃーん!」

翔子は…あんな下品な笑いかたをする子じゃないと思っていた。
笑顔が素敵な、花のように笑う子だったはずだった。

僕は騙されていたんだ。
そのとき初めて気がついた。