「ちょっとっっ!!それはマズイって。」
学校一怖いといわれている山元先生のいる部屋をのぞいている美香。
「えー??だって山元怖くないじゃ~ん!!怒ってる顔ウケるし♪」
美香は怒られても絶対に泣かないという武勇伝を持つ子。
この前だって校内中に響き渡るような大声で山元に怒鳴られたのに、教室に帰ってきたらケラケラ笑ってた。ある意味で私は美香を尊敬してる。
「美香、怖い。」
「もぉ!!沙耶は心配しすぎだから!姉御肌だよねー、ホント。」
美香が笑いながら言ってきた。
「姉御肌じゃないからぁ。美香がそうさせてるんじゃん!!」
冗談めかしていったが、本来の私は・・・姉御肌なんだ。

私、加山沙耶は放送部の2年生。
後輩から敬語使われるのに最近やっと慣れたダメな先輩だけど 笑

一年のころ、私は自分を偽った。
私の作った新しい私の姿は、「少しぬけた女の子」だった。
本来の私からは大分かけはなれていたが、人見知りをしてしまう私は、自分を偽る事でしか人と接する方法を知らなかった。
最初のうちはうまくやれていて、それなりに友達もいたけど、よく分からない。
何でかしらないけど、女子のボスっぽい子に目をつけられてしまったんだ。
そのころの私のあだ名、かばま。
なんで加山がかばまになったのか分からないけど、気付いたらそう呼ばれてた。
丁度、体育祭の時期だったと思う。
放送部の私は、学年で草抜きをする時間に、放送室で当日の日程確認、準備をしていた。
部顧問は、山元。本気で怒られて泣いた先輩もいた。
怒鳴られて、走り回って・・・。
やっと体育祭準備の時間が終わり、教室に戻ると、クラスメイトから発せられた第一声、
「沙耶、何処行ってたの!! あ、放送?? いいよね~。さぼれてっっ!!
私らなんて草抜いてどろまみれになったのに。マジそーゆーのウザいんだけど!!」
気の弱かった私は、何もいえなかった。
ただ、溢れ出す怒りと悲しみを抑えるのに必死だった。

よく考えたらあの時からだ。
私が「キレる」という最終手段を覚えたのは。