「あの、あづ……じゃなかった。
 空我のお母さんですよね?」



 めぐが涙を拭いて、おもむろに立ち上がった。



「ええ、初めまして。空我の母親の亜月穂稀(アヅキホマレ)です。貴方は?」




 白衣を着た俺の母親はめぐに軽いお辞儀をして、
社交辞令のような笑顔を向けた。





「赤羽奈々絵さんの彼女をしています、
日比谷恵美と申します。

それであの、奈々絵の容態は……」



 あのめぐの体が震えていた。



 潤の何倍も我慢強くて
俺らの姉御のような存在
だったこいつが泣くなんて、

奈々絵は本当に愛されているんだと思う。



 そしてそんな奴を壊しかけてしまった




自分が




心底憎くてたまらない。