翌日、かねてより約束していた裕紀とのデートだった。

放課後デートなので制服のままだ。

そんな私たちは普通にこの街に溶け込んでいる。

なんの変哲もないただの高校生カップル・・。

周りからはそう見られているに違いない。

もちろん私の横を歩いている裕紀でさえ当たり前にそう思っているはず・・。


「沙都ーー、今日カラオケいかね?」

裕紀がいつもと同じような明るい笑顔で私の方を向く。

「あ・・うん、いいよ」

了承の返事はしたものの、実は私・・カラオケに行っても歌わない・・。

黙って人の歌を聞いているだけだ。

自分が歌うのは苦手だけど、人の歌を聞くのは嫌いじゃない。

そんなこんなで裕紀は頻繁に私のことをカラオケに誘う。


ちょうどいい・・って言ったら裕紀に失礼な話だけど、少なくてもカラオケに行っている間は黙っていられる。

とてもじゃないけど、ベラベラと話す気にもならないし、それを聞く気にもならない。



「よし、沙都、ここ座れよ」

裕紀がやたらテキパキと受付を済ませ、部屋を取っていた。

扉を開けるとカラオケ独特の照明と匂い・・あとは周りの部屋からかすかに漏れる歌声。

「オレ、新曲歌うからちょっと聞いててくれなっ」

「うん、がんばってね」

何の疑いもなく私にいつもと同じ顔を見せてくれる彼にどうしようもない罪悪感を感じた。