諒はそんな私にそっと歩み寄ってくる。


何なのよ・・急に・・。

でも・・嫌いで憎い相手のはずなのになぜかドキドキしている自分がいた。


「・・・綺麗になったな・・沙都・・みちがえたよ・・」

「ど・・どうも・・」

私は突然のそんな言葉に動揺してロクな返事を返さなかった。

「絵も、随分うまくなった」

「べ、別にそんなこと・・」


そう、実は私が絵に興味を持った原因は諒にあった。

人を何かに目覚めさせるのが異様に上手いと言った意味はそこにある。

なんせ私もその一人に属する人間だからだ。

まだ付き合ってた頃、彼が絵に興味があると知ってよく学校で描いた絵を見せていた。

そして諒はその絵を見て時には褒め、時には助言をし、時には私と同じ絵を描いたりした。


でも、何があっても私の描いた絵をけなすことはなかった。


そんな私はどんどんと絵にハマっていって・・・。

諒との忘れたい別れの後でも絵だけはずっと描いていた。

今になっては笑い話にもなるかどうかわからないけど、私の工作の宿題を二人共同で造りあげたこともあった。

小学生の宿題に本気で取り組む姿が思い出される・・。


「・・・・」

どちらとも話しださず沈黙が続く・・。

急に重たい空気がのしかかる。

辛い・・。この場にいるのが・・。