「先生ー、沙都はねー化学の久住先生とおんなじ名前だけど全くの他人なんだよーー」

また誰かおしゃべりな女子が余計なことを言う。

そんなこといちいち言ってどーすんのよ・・。

「え・・?兄妹じゃ・・ない、の?」

諒が呆然と聞く。

そう、私とお兄はこの学校では兄妹であることを明かしていない。

今のところこの事実を知っているのはあすかと、・・今教壇に立っているあの男・・松浦諒だけだ。



「よし、それじゃあ・・授業を始める」

いつの間にやら出席を取り終えていたみたい・・。


「オレの授業は別に決まったテーマを提出しなくてもいい。自分のやりたいこと、描いてみたいもの、造ってみたいものをそれぞれやってくれ。あと・・チャイムがなったら勝手に教室に帰ってもいいから」


そう言い残し、諒は美術準備室へ戻っていった。

それを聞いた生徒はみんなかなり動揺しているようだ。

ムリもないよね・・・だってこんなバカなこという先生って今までいなかったもんね・・・(汗)



でも、彼のやってることは決してメチャクチャでもなんでもない・・。

そうやって個人個人の色を見つけていって欲しいと思ってるのだろう。


人が100人いれば100通りの善悪がある。

人が100人いれば100通りの個性がある。

つまりはそういうことなんだろう・・。

彼は昔っからそういう人間だった。

人を何かから目覚めさせたりするのは意外に上手だったりする。

その辺ばかりは認めざるを得ない・・・。


なんせ、私もそのうちの1人だ・・。