なんか教室中の女子が色めき立っているのは気のせいだろうか・・・。

よくみると普段後ろの席でボケーっとしてる子までみんなそろって教卓から一番目立ってみやすい前の席に座っている。


「・・・・」

やれやれ・・。

・・・と、私がボケーっとしているうちに前の教卓のそばにある美術準備室とこの美術室を繋ぐ直通の扉が開いた。


そこから出てきたのはまぎれもなく昨日見たばっかりの昔の・・コイビト、松浦諒だった。


「キャーー!センセー!!」

「きゃーー」

前に座っている女子がまるでアイドルが来たかのように騒ぎ立てる。

・・・なんてこったい・・。世も末だよ・・ホント。


「よーし、出席とるぞー」

諒は教師らしいセリフを吐く。

そして言葉通り順に出席をとっていく。

名前を呼ばれた女子は次々に自分をアピールし、男子はそんな様子を呆れた顔で眺めていた。


「よし、次」


ふと諒の声がハッキリと聞こえた。


「・・・久住・・沙都」

何年かぶりに私の名前を呼ぶ諒の声・・。


「・・・ハイ・・」

私はこっちを見ている諒と視線を合わせずに目だけ横を向いていた。