「ねぇセンセー」
「なんだよ、お前がそういう言い方する時ってロクでもねーからな」
「ふふふ、“追試に出る問題教えて”とかでしょ」
「そそ」
私たちは顔を見合わせてクスクスと笑う。
いつも追試を受けていた。
確かに理系科目は苦手だったけれど、本当は追試をヨユーで免れるくらい化学は勉強していた。
だけど、少しでも一緒に過ごせる時間がほしくて、質問を考えたりわざとわからないフリをしたり、補習を受けたりしていた。
多分、そういうの全部バレてると思う。
でも、邪険にするどころか、いつも相手をしてくれた。
教師っていう立場だからだってことぐらいわかってる。
もちろん、期待していないといえばウソになるけれど。
かわいい生徒のひとり、ぐらいにしか思われてないことぐらいわかってる。
もちろん、期待していないといえばウソになるけれど。
だから、私はそういう立場をめいっぱい利用した。
センセーはそれにいつもいつもやさしく付き合ってくれた。
ねぇセンセー。
センセーはやさしくて残酷だね。
メガネの奥の瞳もそんなセンセーの一面を表してるみたいに、時々険しくなるよね。
そう今も。