「ごめん」
圭太センパイはもう一度深くアタマを下げる。
私は首を横に何度も振る。
もうそれ以上あやまらないで。
みじめになる。
「帰るか」
しばらくなにも話さないまま、私たちは座っていたけれど、圭太がクチを開いた。
「はいっ」
まさに玉手箱をあけてしまった浦島太郎みたい。
告白なんかしなければ、楽しいままでいられたのに。
由実ちゃんに今日のことを伝えたらきっと、好きな人がいるかどうかもわかんないうちに告白するなんてバカげてるって言うだろな。
私のことを恋愛初心者だって言うのは納得。
「はい」
「電車で帰ります」
圭太センパイは私にヘルメットを渡してくれたけれど、私はそれを返す。
「暗いから送るよ」
「いいんですっ」
大きな声をあげた瞬間、渇いたはずの涙で世界がぐちゃぐちゃににじんだ。
「ごめんなさい。ホント大丈夫です。今日は楽しかったし、ホントにうれしかったです。合格祝い大切に使います」
言いながら、涙も止まらなくなってしまった。
「ごめんなっ」
圭太センパイがそう言った時には私はすでに圭太センパイの胸の中にいた。