「……莉子ちゃん、変わったね」



環くんの淡い呟きはすぐに沈んで、パチン、と割れた。




え?

聞き返したはずのわたしの声は、“声”になっていなかった。



静かに、お互いを見つめ合う。




何の音も、色も、感じない。


環くんしか、映らない。



時間が止まった気さえした。




ねぇ、環くん、どうして。


どうして、そんな、

今にも泣き出しそうな表情をしてるの?



そんな表情しないで。


独りで苦しまないで。



あの桜のように、儚く散ってしまわないで。