さっき環くんへの恋心を自覚したこともあって、少しパニック状態。


頭の中が真っ白になって、平静を装うことすらできない。




「ここで会うなんて奇遇だね。どうしたの?」


「えっと……依世ちゃんの家に行ってて、それで、今その帰りなんだ」



質問にたどたどしく返すので精一杯。



「そっか、それで前髪が短くなってたんだ」


「う、うん」


「似合ってるよ、その前髪」



不意打ちで褒められ、何も言えなくなる。


短い前髪じゃ、赤面してることがバレバレだ。



ずるいよ、環くん。




地面に、影が伸びる。


冷たい空気が赤い頬をかすめるたび、落ち着きを取り戻していった。