依世ちゃんの言いたいこと、わかるよ。
環くんは、時折、不思議な雰囲気をまとってるよね。
誰も近づくことのできない、大人びた雰囲気。
「話しかけたら返してくれるけど、絶対にこっち側に踏み込んでこないし」
「うしろで見守ってる感じ、だよね」
「そう、それ!」
一人でいるときの環くんは、ひどく透き通った眼差しで、遠くを眺めてる。
その姿があまりにも綺麗で、それでいて寂しげで。
いつも見惚れてしまう。
「だから、皆瀬くんに名前呼びされてる莉子は、特別なのかもね」
「へ……!?」
わたしが、環くんのと、と、特別!?
体温が急激に上昇する。
「あくまであたしの個人的な憶測だけどね~」
依世ちゃんは鼻歌まじりに言いながら、静かにハサミを置いた。