自覚した途端、心臓がドキドキうるさくなる。


顔が、熱い。



「でも意外だったなぁ」


「意外?何が?」


「さっき下駄箱で、皆瀬くんが莉子のこと名前で呼んでたでしょ?」


「うん」


「皆瀬くんは男女例外なくみーんな苗字で呼んでたからさ、ちょっと驚いちゃった」



そういえば、そうかも。


環くんが誰かを名前やあだ名で呼んでるところ、見たことない。




「それに、皆瀬くんって、なんていうか……誰にでも優しいけど、それだけっていうか」



そこまで言って、依世ちゃんは「あっ」と手を止めた。



「わ、悪口じゃないからね!」

「うん、わかってるよ」


わたしは温和に頷く。