前髪を切っただけなのに、新しい自分に生まれ変わった感覚になる。
まるで、長い前髪が呪いをかけていたように。
「ところで、話は変わるけど」
「ん?」
依世ちゃんは、眉の上まで短くなったわたしの前髪を、繊細な手つきで整えていく。
ハサミが前髪を離れて、代わりにくしが通り抜けた。
「莉子って、皆瀬くんのことが好きだったんだね」
「っ!!??」
びっくりしすぎて、危うく椅子から転げ落ちそうになった。
今ハサミを使ってなくて助かった……。
「ちょ、大丈夫?」
「う、うん……」
動揺を隠しながら、椅子に座り直す。
まさか話題が恋バナになるとは思いもしなかった。
とりあえず落ち着け、わたし!