わたしのせいで、ごめんね。


そう言おうとして、やめた。



「ううん、なんでもない」




そうじゃない。

「ごめん」は、違うよね。


依世ちゃんは、わたしを周りの視線や噂から守る盾として、隣にいるんじゃない。


大事な友達だから、隣にいるんだ。






昇降口に着いた。


下駄箱前にいた環くんを見かけて、衝動的に声が出た。



「た、環くん!」


「あ、莉子ちゃん。莉子ちゃんも今帰り?」


「うん。環くんも?」


「ああ」



他愛ない会話が、特別に感じる。