「もしよければ、あたしが切ろうか?」
「え?」
元の調子に戻った依世ちゃんが、明るく提案した。
依世ちゃんが切ってくれるの?
「あたしの家、この町で唯一の美容院をやってるの」
「へえ、そうなんだ」
「親の影響で、あたしも美容師を目指してるんだ。実力は親のお墨付きだよ」
ブイサインをして自慢げに口角を上げる依世ちゃんに、「すごいね!」と拍手する。
依世ちゃんって、手先が器用なんだ。
わたしは、裁縫もまともにできないくらい不器用だから、うらやましい。
「で、どうする?今なら友達サービスで、タダでカットしちゃうよ」
さっきのブイサインの際に立てられた人差し指と中指が、チョキチョキ、横に動く。
その仕草に、表情がほころんだ。
「お願いしようかな」
「了解しました!」