急にテンションが高くなった依世ちゃんは、ハッとして、ゆっくり身を下げた。
「な、なんて、さすがに嫌だよね。オンザにするだけでも勇気がいるのに」
不格好な作り笑いをしながら、話題をそらそうと自分のお弁当のおかずを豪快に食べていく。
珍しく慌てふためいてる依世ちゃんの姿に、ふっ、と噴き出してしまった。
さっき依世ちゃんはわたしのことを可愛いって言ってくれた。
けど、依世ちゃんのほうが、ずっとずっと可愛いよ。
「箸、逆だよ」
「えっ、ウソ!?」
「ふふ、ホント」
恥ずかしがる依世ちゃんを、前髪の隙間から見据える。
「なんか、依世ちゃん見てたら、オンザもいいなって思えてきた」
「……ウソ」
「ホントだよ」
弱虫な自分を変えようと形から入るのも、悪くないよね?
前髪を依世ちゃんとおそろいにしたら、依世ちゃんみたいな真っ直ぐな自信を得られそうな気がする。