突然、どうしたのかな。
「前々から思ってたんだけど……」
そんな前置きをして、話し出す。
こ、この空気……もしかして。
一緒にランチとか迷惑だった?
話の続きを、ドキドキしながら待つ。
「な、なに?」
「あたし、矢崎さんのこと名前で呼びたい」
「……えっ?」
想定していなかった言葉に、思わず気の抜けた声がこぼれた。
心の中に充満していた不安が、一気にかき消される。
「ダメ、かな?」
咲間さんは、わたしの呆けた顔を覗き込むように、首をかしげる。
我に返って、ブンブン首を横に振る。
「ダメじゃない。ダメじゃないよ!」
大事なことなので、二回言った。