「俺は何もしてないよ」
「そんなこと……!」
「莉子ちゃんが頑張ったからだよ」
わたしだけの力じゃないよ。
そう、反論しようとした。
けど。
皆瀬くんの大きな手が、ポン、とわたしの頭を撫でた。
触れたところから熱くなる。
喉まで出かかっていた言葉はするする滑り落ちていった。
胸が、苦しい。
うるさいくらい飛び跳ねる鼓動が、環くんに聞こえていたらどうしよう。
「た、環くん」
「ん?」
環くんと“あのときの少年”が似てるから?
ときどき、二人をリンクさせて見てるから?
だから、心臓が忙しなく高鳴るの?