「なー、何も喋らへんの?」


その人は私の顔を覗き込んできた。


「誰?」


目の前で喋るこの人が、誰なのかすら、私は知らない。


「んー・・・淋しい男の子?」


あっそ。


馬鹿じゃん、


意味分かんない。


悲しい笑顔。


痛いくらい胸に刺さって、聞くのを止めた。


「みーちゃんてさ、どっちがほんまなん?」


「?」


「今の冷たーい目ぇしたみーちゃんと。友達と笑うとるみーちゃんと。どっちがほんま?」


分からない。


・・・どっちも。嘘なのかもしれない。


「みーちゃん?」


「・・・・何で知ってるの?」


「?」


「みー、ちゃん・・・・て」


仲いい人しか、知らないのに。


「学校行った時、聞いてん。友達に呼ばれとんの。」


・・・・あぁ・・・そういう事か。


てゆうか、学校来るんだ。


「友達居らへんかと思ったのに。」


何故か口を尖らせてそう言う。


「失礼だよね、」


「初めて言われた。」


びっくりしたようにそう言う。

今までこの人に失礼て、
思わない人が居るはずがない。


やっぱりこの人、よく分からない。


「みーちゃん、何か喋ってよ」


「喋る事ない。」


「じゃー俺に質問して。」


「聞く事ない。」


だって興味ない。


「ふは、ひどっ。」


きっと、あんたの方がひどいと思う。

・・・・分からない、けど直感的にそう思った。


「じゃあ、名前。」


「じゃあて・・・」


苦笑いするその人を軽く睨んだ。

あんたが質問しろっつったんでしょ。