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救急車に乗ると、自分の名前などを記入する
紙を渡された。
救急車に乗るのは、弟が事故った時以来で
その時は命にかかわる程ではなく、笑って
会話していたぐらいだった。
でも今は、ストレッチャーに苦しそうに意
識がなく呼吸をしてる陽菜ちゃんを見て、
俺は陽菜ちゃんが、目の前からいなくなっ
てしまうのではないかと怖くなった。
その時、俺はこの子を一生守りたいと思っ
たんだ。
出会いは最悪だったが、俺は陽菜ちゃんに
一目ぼれした……。
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救急隊「かかりつけの病院などはわかりますか?」
養護教員「はい、洛北大学病院に搬送して下さい。」
救急隊「分かりました、受け入れ可能か確認します。」
救急隊(こちら横川消防です。そちらにかかっている16歳の女性で喘息の発作疑いがあり、意識レベルは現在300です。)
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救急隊「受け入れ可能だったので、出発します。」
養護教員「お願いします。」
救急隊「じゃあ、発見者の方にいろいろお話を聞きたいんですがよろしいでしょうか?」
雄輝「はい。」
救急隊「発見された時は、どんな感じだったか分かりますか?」
雄輝「俺が、階段を上ろうと思って近くまで行ったら、なんかすごい咳が聞こえて、多分歩いてる人が風邪でも引いてるんだろうなって感じで、自分は階段を上り始めたんですけど、そしたら踊り場でその子がうずくまっていて…」
救急隊「じゃあ、すごい咳をしていたのはその子だった感じですかね?」
雄輝「はい、あまりにも咳がすごいので声をかけたら、返事をしてくれて…その時にその子が握りしめていた吸入器が見えたので、多分喘息の発作だと思いました。」
救急隊「分かりました。まだその時は意識はあったということですね。」
雄輝「はい、で、階段に座り込んでいて冷たいと思ったので、すぐ近くにあるベンチまで歩けるか?と聞いたら、はい…と返事をしてくれて、フラフラしながら立ってくれたんですけど…移動しようとしたところに友達が来て、手伝ってもらおうと話していたときに急に音がしたので振り返ってみたらその子が倒れていました。」
救急隊「分かりました。ありがとうございます。松澤さんのご家族には病院のほうから連絡入れますか?」
養護教員「先ほど、学校で連絡をしたんですが繋がらなくて…留守番電話にもならなかったので、もう一度病院で連絡してみます。」
救急隊「分かりました。もうすぐで到着します。」
養護教員・雄輝「はい。」
多分、救急センターには親父がいるはずだ。
頼むから、この子を助けてほしい…………
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救急隊「松澤陽菜さん、16歳女性です。喘息の持病があり、発作の疑いです。意識レベルは変わらず300です。」
病院スタッフ「松澤さーん、病院に着きましたからね!安心して下さいね!」
看護師「付き添いの方はこちらでお待ち下さい!」
養護教員・雄輝「はい。」
救急センターの中は、陽菜ちゃんのほかにも
何人かが運ばれてきていて、修羅場と化して
いた。
その中で、スタッフに指示を出している見覚
えのある人を俺は見つけた。
親父だ………
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救急センターから待合室に向かう時、親父が
俺の存在に気がつき、今まで見たことのない
優しい表情をして、うなずいた。
「大丈夫だ。安心しろ。」
と言っているように俺は感じた。その瞬間、
俺は肩の力が抜け少し気持ちに余裕が持て
た。
今まで、親が医療関係の仕事に就いてるか
ら俺もなんとなく医者を目指していた。
でも、この時に俺は、陽菜ちゃんを守れる
ような医者になりたいと思った。
養護教員「伊戸川君、先生焦って連れてきちゃったけど家に帰らなくても大丈夫?」
雄輝「はい、親父もいるんで…陽菜ちゃんが目が覚めたときにそばに居てやりたいんで…」
養護教員「そう……優しいのね、伊戸川君。」
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それから何時間経っただろう…
養護の先生曰く、陽菜ちゃんのお父さんは
学会でアメリカにいるらしく、日本に着く
のは明後日になってしまうらしい。
お母さんは、市内の病院に看護師として働
いているらしい。連絡はついたが、来るま
でに2~3時間は掛かってしまうらしい。
バタバタ……
病院スタッフ「松澤陽菜さんのご家族の方はいらっしゃいますか?」
養護教員「はい。」
病院スタッフ「担当医よりお話がありますので、こちらへどうぞ。」
養護教員「分かりました。伊戸川君、ちょっと待っていてくれる?」
雄輝「分かりました。」
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バタバタ……
養護教員「ありがとうございました。」
病院スタッフ「いえ、病室のほうへご案内しますね。」
養護教員「はい、伊戸川君お待たせ。今、病室のほうに移動したらしいから私たちもそっちに行こう。」
雄輝「はい。」
その時、聞き覚えのある声に呼びとめられた。
??「雄輝。」
雄輝「親父…」
雄輝父「ちょっといいか。」
雄輝「あぁ。」
養護教員「じゃあ、伊戸川君先に行ってるわね。」
雄輝「はい。」
雄輝父「まさか、お前も一緒に病院に来るなんて思ってもいなかったよ笑」
雄輝「俺が最初に陽菜ちゃんを見つけて、養護の先生も発見者が一緒に行ったほうがスムーズだって言われて…」
雄輝父「まぁ、そうだな、こっちとしても助かるしな。ところで、陽菜ちゃんとは知り合いなのか?」
雄輝「学校の後輩だけど、話したことはない……」
雄輝父「そうか、お前が見つけてくれなかったらあの子は危ないところだった。ありがとな。」
雄輝「いや、ただ目の前にいるあの子がいなくなるのだけは避けたかったから。」
雄輝父「お前がそんなことを言うなんて、珍しいな。陽菜ちゃんに感謝しないと笑」
雄輝「それより、陽菜ちゃんは?」
雄輝父「あぁ、一時は危なかったが今はだいぶ良くなってるよ。しばらくは入院して様子を見ることになるけどな。」
雄輝「そっか。親父…」
雄輝父「なんだ?」
雄輝「陽菜ちゃんを助けてくれてありがとう。」
雄輝父「助けるのはあたりまえだ。陽菜ちゃんの生きる力が強かったんだよ。」
雄輝「うん…じゃあ俺病室行ってくるわ。」
雄輝父「あぁ、今日は当直だから何かあったら連絡しろ。あと、母さんにも連絡しておけよ。」
雄輝「わかった。」
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