マナーモードの意味ないじゃん!
そう思うくらい鳴り響いている。

バックの中でブーブーブーブー。
なにかとぶつかってるようだ。

「出なくていいの?」

彼氏の家まであと5分。
さっきタクシーを降りたばかりだ。

仕事が終わって食事を済ませて、家に向かってる最中だった。

「…ちょっとごめんね」

腕時計をチラ見してから、バックの中に手を伸ばした。

10時15分、、、こんな時間に?
心当たりが全くない。

「…あ!」

思わず声を漏らしてしまった。
一人だったら飛びつく相手だ。

今日は後輩と飲みに行くからと、
わたしをドタキャンした相手。

「ちょっとごめんね!」

そう言いながら離れていき、コホンと咳払いをした。

「もしもし?」
『もしもしっ!』

若い女の声が聞こえて、スマートフォンの画面を見る。

間違いなく長谷川和也、、、
和也のスマートフォンからだ。

「、、、もしもし?」

『さやかさんっ!さやかさんですね?遅くに電話して、すいませんっ!あの、あたし…和也さんの後輩で、中島ひとみと申します!』

「、、、はい?」

半信半疑で耳をかたむけた。
電話は途中で男に代わった。

前のアパートなら知ってるけど、引っ越した先は知らないと言った。

わたしはそれさえも知らなかった。
引っ越したなんて、今が初耳だ。

だけどそんなこと言えない雰囲気、、、

「分かった。行くわ!焼肉屋ね!」