海に着いたのは夕方だった。
間に合ったと蒼井は言った。

日が沈む前に連れてってよね!
そう言われながら漕いできた。

俺は当然ひどく疲れてて、笑う余裕も全然ないのに、思ってたよりも早く着いたとか、澄ました顔して答えてた。

「蒼井の特別になりたかった。だから必死にかっこつけてたよ。バカだよな。まじで黒歴史…だけど、あの日のことは忘れたくない」

お疲れ様と渡されたジュースを、階段に座り並んで飲んだ。

オレンジ色に輝く太陽を、蒼井は真剣に見ていた。

俺は蒼井を見つめていた。
キレイだなって思いながら、、、

このまま時間が止まってほしいと、
柄にもないことを願いながら、、、

フワッと揺れた茶色い髪の毛に、
思わずそっと手を伸ばして、
気づいた時には抱き寄せていた。

「ゴメン」とすぐに手を離した。

どうしたの?ってビックリされたり、
なにするの!って叱られたり、
そういう反応されるはずだった。


ーーーだけど違った。全然違った。

「和也のこと、好きかもしれない」