ーーー今でも全部、覚えている。

【なんで見てるの?】
授業中だった。蒼井が突然、机に書いた。

【蒼井じゃなくて、海見てたんだよ!】
高鳴る鼓動を抑えて返した。

蒼井は窓の外を覗き、遠くに見える海を見つけると、俺の方を向きニコッと笑って、再び文字を書き始めた。

【海行きたい!】
【行こうよ! みんなで】

【今から!】
【今から?!】

【行こうよ!二人で】

「どういう人だったんですか?」
山田はそう訊いて、すぐに慌てて、
横目でひとみちゃんを見た。

様子を伺ってるようだ。

「あたし、全然だいじょぶですからっ!」
彼女は隣で声を荒げた。

「むしろ気になって眠れませんからっ!あたしにも続き、聞かせて下さいっ!」

頼んだばかりのビールジョッキが、半分以上なくなってた。

こんなにもハイペースで飲んだのは、本当に久し振りだった。

照れ隠しで飲み続けているのか、
やりきれなくて飲み続けているのか、
すでに判断ができなくなってた。

それでもペースは崩さなかった。

「すごい無茶苦茶なヤツだったんだよ。しょっちゅう授業サボっててさ。海まで連れてったこともあったし。チャリで二時間、後ろに乗せて…」