太「弱いな、お前…」
百合亜の声にかき消されるような小さな俺の声。
でも自分でわかった。
声が掠れていると。
太「お前がそうなら…百合亜は俺が貰う。幸せにする。それで良いんだよな…っ…?」
…神埼侑の馬鹿野郎。
俺は壁へとフラフラと下がり、背中を冷たいコンクリートの壁にくっ付けながら、一粒の涙を流した。
百「…っ…太一…」
太「ん…?」
それからしばらくして、百合亜の家族や、神埼侑の家族が病院へと来た。
中居に少し落ち着いた百合亜を任された為、廊下のベンチに2人で並んで座った。
百合亜は俺の肩に凭れたまま、泣いている。
百「…太一…太一…」
太「うん…」
百合亜は俺の名を呼び、存在を確かめていた。
百「…太一…太一…太一…太一…太一…」
太「俺いるから…百合亜の傍にいるから…」
百「太一…?」
太「ん?」
百「"独りにしないで…"っ…
私を独りにしないでぇ…っ…」
太「お前は…独りじゃねーから」
百合亜の悲痛な言葉に、俺は握っていた拳を開き、百合亜の小さな手に重ねた。
嫌でも時間は流れて行く。
侑が亡くなって3ヶ月が過ぎていた。
学校には通っている。
でも、楽しくなんてなかった。
侑がいないこの世界に、興味なんてない…。
生徒手帳に収まる侑とのツーショット写真と婚姻届が、私を救う。
壊れたように、侑が生きてる気がして仕方なくなるから。
……侑、元気ですか?
私は毎日が寂しくてなりません。
太「百合亜、帰ろうぜ」
啓「俺がアイスクリーム奢ってやるからさ!」
百「うん…」
この3ヶ月、太一たちに本当に支えられていると感じた。
…仲間っていいな。
そう感じてならない。
太「俺はチョコミントな!」
魁「俺は…」
啓「いやいや、お前らには奢らないし!;;」
太魁雅春「何でだよっ!!」
…フフッ。
久しぶりの全員集合したダークネスの掛け合いが楽しく感じた。
啓「あ!百合亜が笑った!」
太「…百合亜」
百「ハハッ…っ…私って馬鹿だね。みんないるのに、悲しんでばかりで…っ…」
太一に頭を撫でられた。
その瞬間、胸が温かくなり、私は涙を流した。
百「わた…っ…私はバニラとメロンのダブル!太一、チョコミントちょっと頂戴よっ!!」
太啓「任せなさーい!(笑)」
……侑、私、笑います。
だから侑も、笑っていて下さい。
太「百合亜、一口がデカイっつーの!;;」
百「男がケチ臭い事を言うなっつーの!(笑)」
魁「俺の抹茶が…;;」
百「緑ぃのは髪の毛だけにしときなよ?(笑)」
雅「俺のチョコ返せっ!!」
百「チョコっと位はいいじゃんよ!(笑)」
春「……チーズ…まぁ良いか」
百「優しいじゃん。春仁は!」
私たちは笑い合いながら、アイスを食べ続けた。
笑いが絶える事がない。
でもさすがに、食べ過ぎた…;;
百「気持ち悪い…;;」
太「馬鹿…;;」
春「お茶」
百「ありがとう、春仁…」
太一の呆れ顔を無視して、春仁からペットボトルのお茶を受け取り、一口飲んだ。
雅「大丈夫か?」
私の隣に座る雅之が顔を覗き込んで来る。
私はそれに頷く。
百「──うっ!;;」
その瞬間、もの凄い吐き気が押し寄せた。
雅「え゛!?;;」
私は手で口元を覆って、傍のお手洗いへと駆け込んだ。
タイミング的に、雅之の顔が原因みたいだよな…;;
───…
数分後、私はすっきりして、太一たちの元へと戻った。
太「顔色良くなったな」
百「すっきりした。(笑)」
太「そっか!」
太一に頷き、私たちは夕食も共にする事になり、太一ん家の近所のファミレスに行く事にした。
啓「何する〜?」