急に景色が暗くなり、おもわず呆然とする。

走った。久々に全速力で。

走って

見えなくなるまで走って…
息が切れるのも忘れるほど

走った。

ぼんやりとこの坂の先に自分の家が見える。

あともう少し。

でも体が限界なのか思わずしゃがみこむ。

「けんちゃん、速いよお〜!待って!」
「へっへーん!ここまでおいで〜!」

ランドセルを背負った2人がたのしそうにわたしの前を通り過ぎる。




【こっちみんな】

うすうすは感じていた、、



『避けられている』



でも、なんとかごまかしてきた。

私の本心をいつも分かっててくれた…
困ってる時にいつも助けてくれた…

そんなあの人に

避けられているなんて思いたくなかった。

嫌われているなんて思いたくなかった。



昔は一緒に帰ってたんだよね。

昔は普通に話してたんだよね?

余力でこの坂をなんとか上り、家までたどり着いた。

さりげなく、横目であの人の家をみる。
ななめ向かいの赤い屋根。これがあの人の家。

玄関に竹刀は置いていない。じゃあ、まだ帰っていないのか。あの人は『剣道部』

昔、2人でハマった映画があって、多分その主人公にあこがれて入ったんだと思う。

よく2人でものまねをして遊んでいた。
もう、そんな笑いかけるあの人は完全に私の前にはいなくなった。

『ただいま。』
なるべくしずかな声で呟いたようにいい、
2階に上がろうとした。

『あら、らんちゃん〜おかえり。』

『あ…ただいま。』
はぁ…サイアク。

『らんちゃん、なんかあったの?』

心配そうな顔で私の顔を覗く母親。
いや、ちがう。心配してるのは私じゃないはず。

でも、この時は悲しくて辛くて耐え切れなくなった感情を誰かにいいたくて…

『あのね…』

『まさか…らんちゃん、模試の成績悪かったの?前、自信ないとか言ってたわよね?悪かったの?』

『えっ…』
やっぱり。いつもこうだ。親に心配なんてされたことない。私のことなんて何もわかっていないんだ。

『お母さん、怒んないから、言ってみなさい。』

『英語が1点下がりました。あとは上がって、総合順位は変わりません。』

母親は安心し切った顔で
『よかった…でも、英語1点さがったのね…勉強しなきゃだめよ?でも、らんちゃんはいい子なんだから大丈夫よねー!』

お決まりのセリフ
お決まりのシチュエーション

さすがにもういやだよ。


いい子じゃないよ。


ちゃんとわたしを見て。