あと1ヶ月で1年が終わる。

年末、といっても相変わらずオリブレイトは春のような気候で優しい光が降り注いでいた。

この世界では年末年始は国を挙げての一大イベントらしい。

年末の2日と年始3日は城でパーティーが開かれるし、あちこちの都市でも舞踏会やショーや、とにかく華やかなイベントが催される。


オリブレイトはサフィニア、ガルティアの2国と同盟を組んでいる。

この3国で主催を持ち回る。

今年は、オリブレイトが主催の年。

もう半年も前から国中慌ただしい雰囲気だった。



あたしは、オリンピックみたいだな〜って、人事みたいに見てた。

だって、このことに関してはあたしに出来ることなんてないし。

せいぜいみんなの邪魔にならないようにしようってくらいで。

最近は、こういう明るく活気がある雰囲気のお陰かユメクイもすっかり姿を見せなくなっていた。

あたしの気持ちも満たされてるし、ね。




なーんて、余裕だったのに。





「はぁ〜・・・」

部屋からテラスに出てガーデンを見下ろす。

いつもよりたくさんの庭師で手入れしている。

城壁にも色とりどりの花やリボンで装飾がなされていく。

まるでテーマパークみたいだ。

あっちは作り物でこっちが本物なんだけど。


それにしても。

「はぁ〜」

またため息が出てしまった。

もう何度目だろ。



3年に1度の、国の威厳をかけたイベント。

その準備でみんな大忙し。

リドも、もちろん同じだった。

同じ城にいるはずなのにもう10日も顔を見てない。

忙しいんだろうけどさ。

けど、ちょっとくらい会いに来てくれたっていいのに。

ほんのちょっとだって嬉しいのに。

「はぁ〜...」

あたしのため息は誰にも気づかれることなく、消えてった。