それはある夏の物語だった。
だから言ったんだ。
私は忠告したのに。
あぁ、人間はなんて愚かなんだろう。
夏なのにも関わらず、あの夏独特の空気は感じられない。
夏といえば、日本の夏といえば、それは暑くてだるくなるような日差しの強い昼間。
・・・みたいなことを思い浮かべるだろう。
それは実際、私もそうだった。
・・・私がまだ小さい頃までは。
空一面、厚い雲に覆われている。
太陽の日差しなんてどこにも感じられない。
これが夏だなんて思わない。
気温だけが高い、日本の夏らしくない日本の夏。
いつからだろうか?
大好きだったはずの夏が嫌いになったのは。
朝だというのにほぼ夜のような天気。
都会のビルの上から眺める景色は、夜だとしか思えないような景色だった。
私が小さい頃は、まだこんなことにはなってなかったのに。
だから機械なんてものは発達しなければよかったんだ。
10年前、まだ私が高校1年生だったとき、ある偉い人が開発した人工知能、『アシオス』によって、全国的に機械の普及が始まった。
機械の普及ならスマホとかもそうだが、『アシオス』の場合は違う。
できるだけ人間に近い知能を取り入れ、仕事でさえも『アシオス』に頼り切る。
そのせいか、人間はダメになってしまった。
働かない。どうせ働かなくていいなら、学校になんて行かなくていい。そう思い、外に出る人が少なくなっていった。
でも、それじゃダメだと立ち上がったのが、後に『キャリーズ』と呼ばれる医療グループだった。
なんだその胡散臭い医療グループはって?
『キャリーズ』は・・・私がひっぱる、私の人生そのものだった。