それから私は徐々にあの人と一緒にいるようになった。





「璃乃ちゃん、おはよー」

「おはようございます」





にこっと笑うようにもなった。


これが、自分の演技力なのか心からのものなのか…それは自分でも分からない。





「いやー俺今日電車乗り過ごしちゃってさ」

「寝坊?笑」

「いや…まあ、そんなとこ?」





…何で疑問形なんですか笑


そんな風に普通に会話するようにもなって案外楽しい。





「あ、あのっ…」





松下月星という男はやっぱりモテるようで女の子に呼び出されるのも日常茶飯事。





「璃乃ちゃん、ごめん。ちょっと行ってくるな?」





そう私のもとを離れるのも日常茶飯事。


いつもならそう思うんだけど…

今日は女の子が呼び出した場所がたまたま私が教室に戻るのに通る廊下から見えるところで、本当にたまたまその光景を見てしまった。



女の子が泣きながらあの人の胸を叩いてる。

止めることもなく、肩に手を置いて泣き止むのを待ってる。


わ…大変だな、なんて思って通りすぎようとすると





「芹澤さんの…どこが良いんですか?!月星くんと一緒にいるのに幸せそうな顔ひとつしない…!」

「だからだよ。
君みたいに俺のこと好きになってくれる子がいるなかで、あの子はそうじゃない。それが凄く気になるし落としたいって思う」





…ほ、誉められてるんだかそうじゃないんだか…


いや、後者の方か。





「じゃあ、落ちそうにないから月星くんはあの人と一緒にいるんですか!?
あの人が落ちたら私にも希望があるって…そういうことですね?!」

「んーー、そうなるのかな。
とりあえずはあの子のこと落としたいんだ、だからその邪魔は…しないでね」





なんて笑顔で言うこいつは……やっぱり私を落として満足感に浸りたいだけの最低最悪な男だ!


私は絶対好きになんてならない!!!