その声に振り向けば。

「郁斗くん…」

立っていたのは郁斗くんだった。

面倒だから教室には来ないでって言ってるのに。

私が陰口を言われていたり、軽い嫌がらせを受けてるなんて知らないんだろうな。

まぁ、私が言ってないだけなんだけど。

「今日は一緒に行けなくてごめんな?その代わりさ、今日部活早めに切り上げてもらうから、ご飯食べに行かない?」

大会前なんだから、ちゃんと練習したらいいのに。

郁斗くんとは、私が告白されて付き合った。

正直彼には全く興味はなかったけど、ただなんとなく、その時他に相手はいなかったからOKした。

彼は私のことをとても好きでいてくれているけど。

私はそれほどの愛は返せない。

そう確信しているからこそ、彼からの愛を重く感じる事があった。

「あ、うんいいよ。じゃあ放課後教室で待ってるね」

とりあえず笑顔を取り繕って、郁斗くんとわかれた。