「そのうち、涙も出なくなって、段々と自分の生活の中から和樹が消えていった。

少し前までは、存在してたのに、本当に溶けるようにして、少しずつ消えていくんだよ。

……怖くて仕方なかった。

いつか、和樹がいないことが当たり前になる日が来るんじゃないか?って思うと……涙よりも恐怖の方が勝ってた。」




私は、ギュッと唇を噛みしめ、拳を握りしめる。



「そんな生活してて良いのかな?って……。

和樹は、そんな私を見て、どう思うんだろう?って……。

考えたら何も出来なくなって……。

ねえ、和樹っ……私っ……もう貴方の所に行っても──」






そこまで言ったところで、私はデコピンをかまされた。






「──お前、バカじゃねぇの?」





「……へ?」





まさかの行動と、言葉に私は拍子抜け。


目の前の和樹は、呆れた顔でまた話を始める。







「消えて良いんだよ。てか、消えていくのが当たり前なんだから。

それに、葵がずっと悲しんでたら、俺だって後悔ばかりして報われねぇよ。

ちょっとは楽しそうに笑えよ。

もっと好きなことしろよ。




……あと、早くいい人見つけろよ。」







「な、何言ってんの!?私は、和樹の事がずっと──」






「──あと、葵。生きろよ。」






その言葉に、胸がギュッと締め付けられる。

言い表せない苦しさに、私の視界がぼやける。