「──和樹って、三か月前に死んだんじゃないの……?」




一際大きな風が吹いた。

咲いている花の花びらが、その風に乗ってたくさん散っていく。

その瞬間、空の色も淡い紫色に変わった。




「……そうだよ。」




その一言で、本当に夢の中にいることを実感した。

そうだよ。和樹は死んだんだ。

三ヶ月前の夜。交通事故で……。


彼は、もうこの世に存在しない。存在している筈がない。



「葵。」




そう呼ばれ、抱き締められる。




「ごめんな。」




和樹の謝罪が、胸にグサリと突き刺さる。

どうして?

何がごめんなの?

和樹は悪くない。

悪いのは……相手でしょ?

和樹の未来を奪った、相手の方でしょ?





「……本当にごめん。急にいなくなって。」



「……謝らないで……。苦しいから……。」



「……うん。ごめん。」





和樹はそう言うと、私から離れる。

そして、切なそうに笑う。


そんな和樹に、私はゆっくりと話をし始めた。






「……何だろう。うまくは言えないけど、最初の一ヶ月は本当に空っぽでさ……何も無くなった。

それだけ、私の生活は和樹で満たされてたんだな……って実感したよね。

やりたいことも、行きたい所も、言いたいことも……たくさんあった。

楽しいことを思い出す前に、後悔ばかりしてて……毎日泣いてた。」





私の言葉に、和樹は何も言わずに、ただ私の目を見つめ続けた。