まるで人形のように。
淡々と仕事をこなしていた私。

ひな様と出会って、血が通い温もりを知った。



自分にも、こんな感情があったのだと。
知ったと同時に、怖くなった。



今まで何年も変わらなかった自分自身が変わろうとしている。
それを認めるのも、変わっていく自分も怖ろしくて仕方がなかった。



でも、今なら思う。
もっと早くに認めてしまえばよかったのだ。



引き寄せられるように身体を傾け、眠るひな様の頬に手を添えた。




「ひな様・・・」



囁くように名を呼ぶと、私はひな様の唇に、自分のそれをそっと重ねた。
執事失格――――



いや、男としても失格であろうか。





そっと、唇を放すとゆっくりと瞳を開いた。
こんな風にしか、自分の想いを表すことのできない自分が情けなく。

ため息交じりに離れようとしたその時、ひな様の瞼がピクリと震えた。