「あ、危ないッ……!」
思わず私は男の子を庇おうと、おじさんの前に飛び出す。
刀がスローモーションで振り落ちてくる。
あ、やばい終わったな、正直そう思った。まあ死ぬつもりだったからいっか、最後に人の役に立ててよかったななんて思う。
私は短く息を吐き出しきゅっと目をつぶる。
よし、切られる覚悟は出来た。
カキンッ……!
だが、いつまでたっても痛みが襲ってこなければ刀も振ってこない。
おそるおそる瞑っていた目を開ける。
すると私の目の前には、鮮やかな水色の羽織を羽織った1人の男性が、私に振り落ちてくるはずだった刀を見事に止めていた。
いつまでたっても痛みが襲って来なかったのは、どうやら彼のおかげらしい。
「てめー誰だよ、どけよくそガキ!!」
さっきのおじさんが怒鳴り散らす。
相変わらず顔は真っ赤でゆでダコみたいだ、そんな呑気な事を考えていると微かに笑い声が聞こえてきた。
視線をおじさんから男性へ向ける。何がおかしかったのか、男性は下を向いて喉を鳴らして小さく笑っている。
「ふふふ……ッ。」
「何笑ってんだよ、貴様人を馬鹿にしてんのか!?お前も斬り落とすぞ!!!」
「へぇ…、随分と強気ですね。」
「黙れ、お前みてーなクソがき、ひと斬りで殺っちゃるわ!!」
そうおじさんは言い、次は男性に刀を突き刺そうと走ってくる。だが、男性は一歩も動かず刀を受け止める。
「クソがき?へぇ…クソがきですか。ふ、面白いですねぇ。」
男性は刃先をおじさんの方へ向ける。
「まあ、強気でいられるのも今の内だけですよ。あ、あとクソがきって言葉は僕に勝ってから言ってもらえますか??」
そう言い、男性はおじさんに斬りかかって行く。それに対し、さっきの強気はどこへ行ったのかおじさんは刀をかわすのに必死な様子だ。
「すごい………。」
思わず呟きが漏れる。
男性の姿、それは舞を踊ってる様にしなやかで、美しくて、かっこよかった。