私の両親は、私が中1の夏に離婚した。

いや、正しくは離婚した〝らしい〟。

覚えていないのだ。

中2の4月、始業式の日に、朝ご飯を食べながら、

「お父さん、今日起きるの遅いね。」

ってお母さんに言ったら、

「何言ってんの、詩織。
お父さんは一緒に住んでないじゃない。」

って顔をしかめられた。

どういうことか全く理解ができなかった。

しかし、本当にお父さんはいないらしい。

お母さんに恐るおそる尋ねると、

半年以上前に離婚して、家を出ていったことがわかった。

お母さんには「そうだったね。」と言ったが、

本当は困惑していた。

なぜ思い出せないのだろう。

なぜ離婚したのだろう。

困惑したまま家を出て、学校に行ったのを昨日のように思い出せる。


そんなことを考えていると足音とおしゃべりが聞こえてきた。

はあ。

私は思考を閉じて本を開いた。

始業まではあと20分。

たっぷり本が読める。

私はすぐに本の世界に引き込まれていった。