朝の光を真っ正面に浴びながら、

桜丘と呼ばれる坂道を登りきると

私の高校が見えてきた。

桜丘高校。

このあたりでは唯一の公立高校だ。


まだ誰もいない校門。

昨日の熱が残った校庭。

静かな校舎。

3階へ続く階段。

その全てをひとりで通りぬけ、1年2組の教室に入る。

また、一日が始まる。


私は窓を開けて自分の席についた。

一番前の左端の席。

誰も座りたがらなかったから、なんとなく私の席になった。

目の前のカレンダーを見る。

5月23日火曜日。

週末はまだ遠い。

これからやってくるおしゃべりの塊を思い浮かべると
ため息がこぼれる。

はあ。

よりによって、あの人たちと同じ高校とは。

しかも同じクラス。

本当は遠くの私立高校に行きたかった。

でも、家庭の事情で近くの公立高校にしか通えなかったのだ。