まだ、涙を流せるような状態じゃないと。そう語りかけたコーチ。キャプテンは、「失敗は有りうる。でも、今回だけは本気になって。全力でサポートするから。甲子園を夢に見る君たちのために」
 君は本当にお節介だ。そこが、キャプテンなりの強さ。あの人君の言葉は今、胸に突き刺さったまま取れない。痛い。でも、夢って、自分で決めたもの。みんな応援してくれているんだから、俺も全力で頑張らないといけない。サポートしてくれるキャプテン、家族は俺の夢を下で支え、、、。こんなにも君は、俺たちを見てくれていることを気づかせてくれる。いつも大切なものを失いかける。全力で守り抜くものがある。こんなにも…お節介な君は、ドンドン掛け縮んでゆく。小さな希望を抱いた俺の夢は、君のくれたあの日の言葉と共に抱きしめている。もう、失うものってなんだか分からなくなってきた。全て、今自分の胸の中にある気がしてたまらない。
 「上野くん!」
 と、キャプテンが走ってきた。
 「はい、いつもの飲み物。」
 と言って、俺はコーヒーを受け取る。冷たくて、心まで凍ってしまいそうで。
 「ありがとう。」
 「どういたしまして。今日も練習してるの?ホンット、自主練をこんな時間までやるなんて、努力家だよ。キャプテンとしていい同級生をもったわ」
 「君の努力が薄いから俺の事をそんなふうに見えるんだよ。」
 「は!?キャプテンを馬鹿にするとはほんといい度胸ね!」
 「う、嘘だよ。練習続けたいから、今日もサポートしてくれる?」
 「どんっと来い!いつでもサポート受け付けてやる!」
 こんな頑固な性格とか、諦め嫌いな君と俺では差がありすぎる。そんな気持ちに気づいてないのだろうか。空振りを十回くらいやってから、練習に入った。
 「ふりが甘いよ!そんなんだとアウトになっちゃう!あと、相手に取られる速度で投げないこと!100kmは目指すからね!」
 「は、はいっ」
 頬に汗を垂らしながら、俺って野球向いてないのかなぁ、と思った。汗なのに大分大粒だった。その時俺は知らなかった。涙だったのに、汗だと思っていた自分を。
 頬をつたる涙を、キャプテンは教えてくれた。
 「汗だと思ったよね。上野くん涙流してるよ。裾でぬぐって。少し休憩しよう?」
 言われるがままに、椅子に座った。馬鹿だ。こんなのも出来ない俺、こんな時間まで練習してるのに出来ないなんて。と思えば思うほど多くの涙がつたる。
 「俺…野球向いてないよな…」
 少し間を開けてからキャプテンはこう言った。
 「そんなことない!私は今までの上野くん見てきて、野球の才能あると思ったこと何度もあるよ!夢は諦めちゃダメなんだよ!諦めたらそこで試合終了!夢も、野球も試合だと思って頑張んなさい!!」
 と怒られた。