嫌な予感は見事に的中し、間一髪のところで俺は美夜に迫る明日斗を阻止出来た。

強烈な嫉妬心。

あの時の圧迫されたような胸の不快感は、多分一生忘れない。

「龍、どういう事だよ」

案の定その日の放課後、明日斗はすぐに俺を呼び出した。

普段寄り付きもしない部活棟にまで来るくらい、明日斗は苛立っていた。

「言っただろ?もうお前に美夜は渡せない」

「龍、お前美夜に惚れてんのかよ」

眉間にシワを寄せた明日斗を、俺は真正面から見据えた。

「好きだよ、アイツの事。だから誰にも渡せないんだ」

「……」

「明日斗。俺は友達としてお前が好きだよ。けど、美夜は渡せない」

繰り返した俺を見つめて、明日斗が息を飲んだ。

「俺との友情にヒビが入るとしてもか?」

明日斗が壁に預けていた体を起こして、切り込むように俺を見る。

俺もそんな明日斗をしっかりと見つめた。

「ああ。ここでお前に嫌われたとしても、俺はお前を好きなままだし、美夜への気持ちも消すことは出来ないんだ」

明日斗はしばらく身動きしなかったが、

「……分かった」

引き結んでいた唇をわずかに開いてこう言うと、静かに俺に背を向けた。