美夜が明日斗との恋に決着をつけようとしているのを知った時、俺はすぐにでもこう言いたかった。

理由は二つあった。

ひとつは、明日斗と美夜の破局を知った奴らが美夜を狙い始めたからだ。

美夜は結構な無自覚で、自分が男子に人気があるなんて露ほどにも思っていない。

二組の相田に告白された時、美夜はずいぶん驚いていたと目撃した敦也が話していた。

……それから、もうひとつが特に俺を焦らせた。

明日斗が……美夜を気にし始めたのだ。

付き合っていた当時はあんなに美夜をウザがっていたのに。

美夜は変わった。

いつも明日斗を追いかけ回して不安に駆られていた時の、あの曇った表情はもうどこにもなかった。

明日斗の気持ちを考え、自分の要望を押し付けたりしなくなったし、髪やメイクも程よく変化している。

明日斗との恋に終止符を打った後は更に表情が柔らかくなり、周りをよく見る余裕も出てきたみたいだった。

それからこれは……ちょっとした俺の自慢だが、美夜は男子の中じゃ一番俺を信頼してくれていた。

明日斗はそんな俺と美夜の関係をよく思わなかったみたいだが、自尊心からか俺にはなにも言わなかった。

あの時までは。

だが、いつかこうなることは予測していた。

明日斗が美夜に接触してきたんだ。