そんな明日斗に龍が言葉を返した。

「明日斗、悪い。けどもうコイツは渡せない」


《ーコイツは渡せないー》


胸がきゅん、とした。

ちょっとだけ痛いような切なくなるような感覚。

私は思わず龍の顔を見上げた。

切れ長の眼は真っ直ぐに明日斗を見つめていて、そう言い切った唇は意思の強さを表すかのようにしっかりと引き結ばれていた。

……なんか、嬉しい。

同性じゃなくて異姓……男子にこうやって守ってもらうのって、なんか嬉しい。

「待てよ……それってさ、龍」

明日斗が何か言いかけたとき、予鈴が鳴り始めた。

「チッ」

諦めたように大きく息をついて明日斗が踵を返した。

それを見た龍が、私の手を引く。

「美夜、戻るぞ」

「……うん」

私の手の熱なのか…龍の体温?それとも、二人の温度が合わさったから?

とにかく…凄くあったかい。

龍と繋いだ手がとても心地よくて、離したくないって思った。