「や……やだ、」

「…なんで」

「やだよっ!」

声を荒げた私を明日斗はグッと見据えた。

「お前、俺の事すげー好きだったじゃん」

確かに好きだった。ううん、今だって嫌いじゃないよ。

でも嫌だ、こんなの。私を好きじゃない人と、キスなんて出来ない。

その時、凄い勢いで誰かが私の身体を引っ張った。

「やめろ、明日斗」

この声って……!

いつもよりも更に低い声だけど、この声の主は。

既に明日斗の視線は私の顔より高い位置へと移動している。

「龍……なんだよ」

筋肉の張った腕が、明日斗から守るように私の腰に絡む。

ああ、龍が……龍が来てくれたんだ……!

ホッとして、それから嬉しくて、私は明日斗に背を向けると龍にしがみついた。

「龍…龍!」

そんな私の耳元に唇を寄せて龍が囁く。

「大丈夫だから……な?」

「うん」

「おい、何の真似だよ、龍」

冗談だろ、と言わんばかりに明日斗が苦笑する。