「最近、雰囲気変わったじゃん」

ズボンのポケットに両手を突っ込んだ明日斗が、斜めから私を見下ろした。

「俺と別れた途端に可愛くなってるじゃん」

驚いて明日斗を見つめる。

「え?…そんな事ないよ。なにも特別な事なんてしてないし」

明日斗がゆっくりと私に近付く。

「この間の昼休み、2組の相田に告られてたらしーじゃん」

……そ……れは…。

「オッケイしたのかよ」

「……してないよ」

徐々に明日斗の瞳に苛立ちの光が生まれる。

「俺、美夜の事ばっか探してる」

ドクン、と心臓が脈打ったのが分かった。

「周りがこう言うんだよ。『牧瀬と別れたんなら、俺が告ってもいいよな?』って。その度にイラつくんだ」

眼の前に立った明日斗は大きくて、私の腕を掴んだ手が少し痛い。

「なあ、美夜。もう一度やり直さないか?」

「明日斗…離して」

怖いと思った。

薄暗い狭い部屋に、明日斗と二人きり。

身をよじっても、明日斗の手は私の腕から離れない。

「美夜、」

その時、明日斗が長身を屈めた。

それから視線を私の唇に合わすと、顔を斜めに傾ける。

……キス、される。