「オッケ」

軽く頷いた龍が机の中から教科書を取り出すと、出入口に向かって歩き出す。

その時だった。

明日斗の視線が龍の頭上を通り越して私を捉えた。

眼が合って、思わずトクンと胸が鳴る。

明日斗が少し驚いたように私を見つめた。

見てくれた……見てくれたっ!

ドキドキとうるさい心臓と、僅かに熱くなる頬。

「ほら」

「あ?あー、サンキュ」

教科書を差し出した龍に、明日斗が我に返る。

すると明日斗のその反応に、龍が私を振り返った。

「……」

「……」

なによ、こっち見ないでよ。

明日斗に背を向けた龍が、何故か私を凝視する。

明日斗と見つめ合っていたいのに…龍が邪魔!

だから私は、出来るだけ明日斗に気付かれないように龍に向かって眉を寄せた。

こっち見・な・い・で!

ところが何を思ったのか、突然龍が私に向かってベェッと舌を出したのだ。

「っ…!」