その目にいつもの輝きは微塵もなくて、くすんでいるように見える。

「昨日のコピー、取りに来たんだ。朝イチで配っておこうと思って」

「今の会話、聞いてた?」

急にそう聞かれて、思わず硬直する。

そんな私を見て龍が小さく笑った。

「わっかりやすぅ」

「や、聞いてないし」

「嘘つけ」

「意味分かんない」

ツン、と横を向くと、龍は少しだけ笑って私の頭をポン、と叩いた。

「行くぞ」

「あ、うん!」

ダルそうにスクバを肩にかけた龍に、私は遠慮がちに話しかけた。

「あのさ。練習今日からだけど、無理しなくていいからね?ただの校内球技大会だしさ」

すると真横に立っていた龍が、僅かに口を開けて私を見下ろした。

「……」

「……」

ん?

「龍?」

「え?ああ。…ん、平気」

やっぱりショックだよね、そりゃ。

センパイ彼女、ハッキリと『もう終わりにしたいの』って言ってたもの。

私にはどうしようもないけど…龍が可哀想。

「変な顔すんな」

「あいたっ!」

急に龍が、丸めたコピー用紙で私の頭を叩いた。

パコッ!と間抜けな音が響く。

「はは、イイ音ー」

「どこがよ?!」

ここで予鈴が鳴り始めた。

「今度こそ行くぞ」

思いきったように龍が言うから、私も少し元気な声で返事をした。

「うん!」