「そんなんじゃないもん!じゃあね!」

見透かされたのが決まり悪くて、勢いよく立ち上がる。

その行動より一瞬だけ早く、龍が私の首に手を回した。

「きゃあっ!なに?!」

「食え!」

「んっ!」

驚くほどの素早さのわりに、何故か龍は優しく私の口にカレー味のウインナーを放り込んだ。

カレーの美味しさとウインナーの旨味がジワァと口に広がる。

…美味しい…。美味しいけど……。

「ダイエット中なのに……龍のバカッ!」

「ってぇ!」

私はボカッと龍を殴ると出入口へと駆け出した。

階段を走り降りながら思った。

……明日斗、食べてくれたかなぁ……。

食べてくれてたら……嬉しいな。


゚*.。.*゚*.。.*゚

『弁当サンキュー』とか『美味かったよ』とか。

少しは期待してたのに、何日経っても明日斗からのLINEはなかった。

食べてくれたのかも分からない。

以前の私がお弁当を作ったとしたら、

『明日斗、食べてくれた?感想は?』

とか、

『ちゃんと言ってくれないなんて嫌!どれが一番美味しかった?!』

なんてしつこくしてたに違いない。