飲んでいたココアで思い切りむせて、またも変な声をあげてしまった。
そんなわたしの隣で彼は、めったに見せない笑顔をみせながら図星かよ、と声上げた。

「ええ、そうですよ悪いですか…」
「別に。いいんじゃないですかね?」
「あ、そうですか…」
「うん」
「……」

…なんなんだ、こいつ。まじでほんとに意味わからないくらいムカつくんだけど。
珍しくわたしに興味を持ったと思ったら別に、って。
知りたいのかそうでもないのかどっちなんだ。

もんもんとする感情を抑えながら、ココアを一口グイッと飲み込む。と、彼がわたしのココアを奪って自分の口へと運んでいく。
その動作があまりにもナチュラルだったから、わたしは一瞬、成海さんもココア好きなんだなあ、なんて呑気なことを考えてしまった。だけど、よく考えれば(いやよく考えなくても)間接キスであって、成海さんがココアを返してくる頃にはわたしはもう成海さんの顔が見れないでいた。

(ほんとに、不思議な人だな…)


全くタイプじゃないけどこの顔を好きな人はどれだけ居るんだろう、とまださっきのことで落ち着かない心臓を抑えながらぼんやりと考える。

きっと、全世界のほとんどの女の人はこの顔が好きなんじゃないか?

ふと、いつかの誰かが『イケメンは顔が良いから、例え相手のタイプじゃなくても好かれるんだよ』と言っていたのを思い出した。
誰だったかは思い出したくても思い出せないけれど、なんだかその言葉は成海さんのためにあるような気がする。

中性的で、万人受けする塩顔イケメン。成海さんを見ていると、『この人タイプ!』とかの次元ではないのだと確信した。